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バイオリンと山、自転車をこよなく愛するkurのチラシの裏。たまには技術的なことを書いたりするかも知れません。

スーパーコンピュータを20万円で創る

正直に白状すると,タイトルに惹かれてこの本を買っちゃった.「これを読めば20万円でスーパーコンピュータが作れるのか?」って.でも,この本は,「コンピュータの作り方」が書いてあるのではなく,「俺たちは20万円でスーパーコンピュータを作ったんだ!」っていう内容の本だった.

まず,スーパーコンピュータって何だろう?スーパーコンピュータとはパソコン(パーソナルコンピュータ)に比べて処理能力が高く,科学技術計算とか,天気予報とか,自動車設計とかに使うような,スーパーなコンピュータのことです.そのまんまですね.

スーパーコンピュータって聞くと,地球シミュレータを代表とするように,大きな専用の部屋に置いてあって,いっぱいCPUが積んであって…ってのを想像しちゃうんだけど,そんなことじゃなくて,重要なのは計算性能.

現代のコンピュータって一言で言っても色々あるけれども,基本的にはノイマン型コンピュータであることが多い.ノイマン型コンピュータっていうのは,メモリの中にプログラムが保存してあって,そのプログラムの通りに処理を行う仕組みのこと.だからメモリの中身を変更することで,同じコンピュータでも異なる動作をさせることができるようになっている.

この仕組みのおかげで,私たちは同じパソコンで,インターネットをしたりワープロで文章を作ったり,ゲームをすることができるわけなんだけど,逆にいえば,色々なことに使えるように作ってあるから,仕組みも複雑だし,値段も高い,とも言える.

じゃぁ,もし,あることにしか使わなかったら?

特定のことにしか使えないコンピュータを作るとすればどうだろうか?たとえば,パソコンをスパイダソリティアにしか使わない人が居るとする.ほかの事には一切使わないし,使えなくていい.もし,そんな要求があったとすれば,スパイダソリティア専用機を開発することを考えてもいいと思う.もちろん,値段は通常のコンピュータよりも,格段に安くなるはず.

この本で述べられているのは,つまちこういうこと.

「重力計算用のコンピュータが欲しい」

それだけに使えればいいから,高速で安いコンピュータを開発しました,と.そして,開発の様子が本の中で描かれている.中を読むと,どうやらロジックICをユニバーサル基板上に並べてコンピュータを作ったらしいことが書いてある.ロジックICっていうと,最近はなかなかお目にかかることは少なくなったものの,性能は決して馬鹿に出来ないと思う.

最後に,私は最近基板上にロジックICを並べて多数の配線を行い,発狂しそうになった経験があるので良くわかる.このスーパーコンピュータは材料費は20万円かもしれないが,これを開発するために,伊藤氏のものすごい努力と苦労があったことが容易に想像できる.スーパーコンピュータを創るのは簡単ではないということを忘れてはいけない.