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バイオリンと山、自転車をこよなく愛するkurのチラシの裏。たまには技術的なことを書いたりするかも知れません。

企業の研究所はビジョンをビジネスにつなげるための組織になる

日本IBMの東京基礎研究所(TRL)で所長をされていた丸山宏さんの「企業の研究者を目指す皆さんへ」を読んだ.

せっかくの機会なので,企業における研究所の在り方について,少し考えてみた.

例えば,日本を代表する企業であるトヨタ自動車は,豊田中央研究所を擁しており,Webサイトによると,エネルギ・環境,安全・人間,機械,システム・エレクトロニクス,材料分野の研究を行っている.私は車に詳しくないので想像だが,どれも自動車を開発するために必要な要素技術であり,コアケイパビリティなんだろと思う.

軽くて丈夫な素材を開発したから製品に搭載しましょうとか,効率のよいエンジンを開発したから製品に搭載しましょうとか,たぶんそんな感じで研究所と製品開発部隊が連携してるんだと思う.

一方,IT系企業の研究所,サイボウズとか,GREEとか,はてなとか,サイバーエージェントとか,ウノウとか,リクルートとか,カヤックの場合を見てみると,社内で要素技術を開発して既存の自社サービスに応用することは少ないんじゃないかと思うんですよね.だって,既にある技術を組み合わせれば新しいサービスの開発が可能なことが多いんですもん.想像だけど.

つまり,従来型の企業の研究所の研究は「こんな研究開発をしたら,このような応用が考えられます」って形だったんだけど,これからは,少なくともIT企業では,「会社のビジョンをビジネスにつなげたいから,このような研究が必要だ」って形になってくるんじゃないだろうか.言い方を変えると,社会に対してボトムアップの研究所か,トップダウンの研究所かと言えるかもしれない.

これって市場における競争のルールが変わってきていることと関係があるのかも知れない.例えばAppleのiPhoneや任天堂のニンテンドーDSやWiiを見ればわかるとおり必ずしも,商品に使われる技術力と,商品の魅力の間に相関関係は見られなくなりつつある.

しかしまぁ,これって自称技術者・研究者としては寂しいことでもあるんですよね.だって,技術企画,研究企画力のない技術者・研究者が増えてるってことですもん.