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バイオリンと山、自転車をこよなく愛するkurのチラシの裏。たまには技術的なことを書いたりするかも知れません。

大学生・高専生が知っておくべきNAISTのこと

最近,後輩とか,知り合いから奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)ってどうなんですか?みたいなことを聞かれたので,ちょろっと書いてみます.ただし,私は情報科学研究科(以下,情報科)出身ですので,物質とか,バイオとかのことはよくわかりません.以下のことも,情報科についての内容です.

ちなみに,私自身の経歴としては以下の通り.

  • 2005年3月 奈良高専卒業
  • 2007年3月 奈良高専専攻科修了
  • 2009年3月 NAIST修了

高専出身者なので大学からのNAISTに進学する場合は若干違うかもしれないけど,NAISTへの進学を考えている人,興味のある人の参考になれば幸いです.

そもそもNAISTって何?

そもそもNAISTって何?ってとこからなんですが,奈良県にある国立大学,奈良先端科学技術大学院大学(Nara Institute of Science and Technology)のことで「ないすと」って読みます.

通常の大学とは異なり,大学院だけの大学で学部に相当するものがありません.なのでNAISTに入学するためには,他の大学の学部や高専の専攻科を卒業し,NAISTに進学してくる事になります.

NAISTには,情報,物質,バイオの三つの研究科があり,どの研究科も素晴らしい教授陣と研究環境を備えています.

NAISTの良いところ

いろんな大学・高専から学生がやってくる

高専生が大学院に進学しようとした時に心配になるのが,人間関係です.一般的な大学の大学院の場合,学生の過半数はおそらく,その大学の内部から進学してきた学生で,外部から進学してくる学生はあまり多くありません.

NAISTの場合は,全員が外部の大学からやってくる学生ですので,全員が同じスタートラインからスタートすることが出来ます.なので,この心配は無用です.

また,様々な地方の学生と知り合いになることができます.私の周りを見渡すと,北は東北から,南は九州までの大学,高専の出身者が居ました.まぁ,やっぱり所在地が奈良だけに,関西出身の学生が多いんですが.

一般の大学だと,こういうことは普通なのかもしれないんだけど,高専の場合って,基本的にはその地方の学生しか居ないので(奈良高専の場合,奈良,大阪,京都,三重の学生しか居なかったように思う),私としてはかなり新鮮でした.

また,情報科の場合,やはり情報系学部から進学してくる学生が一番多いのですが,異なる学部(教育系学部や機械工学部など)から進学してくる学生もおり,様々なバックグラウンドを持つ人と友達になれるので楽しいです.

贅沢な研究環境

NAISTの研究環境は,高専のそれとは比べ物になりません.たとえば,NAISTに入学すると,最低1人1台のワークステーションが割り当てられます.また,学内のほぼ全域で無線LANを利用してインターネットを利用することができます.

さらに研究室によりますが,私の研究室(ソフトウェア工学研究室)の場合は,1人1台のデスクトップPCと,1人1台のノートPCが割り当てられました.また,私の場合は研究に必要だと言う理由で,高性能なサーバを利用させてもらっていました.

また,研究の成果を研究会や国際会議などで発表する際に,旅費を出してもらえます.高専の場合,若干の補助があるものの,学会の参加費も基本的には自費だったのでかなりつらかったです.東京往復してホテルに泊まれば3万円は超えますから・・・.

さらに,学内で研究提案(CICP)という制度があり,学生が「こんな研究がしたい」と提案することができます.この制度を利用して採択されれば,研究に必要な費用を学校側が出してくれますので,自分の興味のある研究を行うことができます.

もちろん,研究提案に応募しなくても,「○○が研究のために必要」ということを説明すれば,大抵の場合は買ってもらえるのじゃないかと思います.もちろん,研究室にもよると思いますが.

このように,研究を行う環境としては非常に優れており,モチベーションの高い学生が思う存分研究できるようになっています.

就職実績が良い

大学院を卒業したら就職する人がほとんどだと思います.ですので,卒業後の就職実績と言うのも重要な要素だと思います.

NAISTの就職実績はこちらのページで見ることができますが,誰でも知っているような大企業に,毎年何人も就職しています.しかも,聞いた話では,毎年大企業への推薦が余っているとのことです.ちなみに,研究室の同期では私以外に5人が就職したのですが,日立製作所×2,マイクロソフト,野村総研,シャープと,日本人なら誰でも知っているような一流企業に全員が就職しました.

私自身は他の大学の就職実績を調べてないのでわかりませんが,地方の国立大学から進学してきた人の話によると,ありえない,ということでした.

お金の心配をあまりしなくても良い

大学院に進学する上で心配なのが,やはり経済的なものです.入学金,授業料も必要ですし,生活費も必要です.ですがNAISTの場合,学生が経済的な心配をあまりせずに研究に打ち込めるようになっています.

まず,多くの学生が利用しているのが奨学金制度です.奨学金制度を使うことで,無利子で毎月88000円を借りることができます.しかも,在学中の成績・研究成果が優秀であれば申請することで返還免除になる場合もあります.

また,学内でTA・RAを行うことによって給料を得ることもできますし,研究室によっては学生を研究員として雇い入れ,給与を払っているところもあるようです.

さらに,NAISTには寮がありますので,電気・水道代込で,月1万円ちょっとで住むことができます.(ただし,寮の部屋には限りがあるため,入試の成績順です.)

これらによって,ほとんどの学生は外部でアルバイトをしなくても生活を送るのに不便しないと思います.

NAISTの悪いところ

ここまでNAISTの良いところを上げましたが,悪いところも多少あります.

講義が多い

私の個人的な感想ですが,NAISTを卒業するために取らなければいけない単位数が結構多いような気がします.

ただ,様々な講義が開講されているので,自分の興味のある講義を受けてみることもできますし,他分野から進学してきた学生でも情報分野について基礎から勉強することができます.また,講義に出ることで,他研究室の友達が出来たりもしますので,積極的に講義に出てみることをお勧めします.どうしても研究室に配属されてしまうと,研究室の中で友人関係が完結してしまいがちなので.

田舎

はっきり言ってNAISTは田舎にあります.最寄駅まで行くのに徒歩で約30分かかりますし,スーパーに行くためには山を登らなければいけません.最寄りのコンビニは,山を下らなければ行くことができませんし,最寄りの飲食店は怪しい居酒屋です.

NAISTの中でずっと研究している,というのであれば問題ありませんが,そうでない場合,原付等の足がないと,少し厳しいかもしれません.ただ,駅まで行ってしまえば,難波にも京都にも行きやすい事は事実です.どちらも30分ぐらいでつきます.ちなみに,私たちの場合は,誰かが出かけるときには友達同士で,車で駅まで送り迎えしていたりもしました.

知名度が低い

NAISTは,知名度がものすごく低いです.同じ国立大学とはいえ,阪大や京大と比較すると,比べ物にならないぐらい知名度が低いです.

話の流れで「大学どこ?」と聞かれたときに「奈良先端科学技術大学院大学」と答えても,「それなに?」って聞かれる可能性が非常に高いです.

名前があまりにも怪しいので,「あぁ,よくわかんないけど,どっかの三流私立大学かな」って思われることも多いです.

でも,幸いなことに,情報分野に携わっている人の中での知名度は,ものすごく高いです.就職活動する際でも,まともな会社の人事の人なら,まず知っている大学なので,そんなに心配する必要がないのは,前述した就職実績の通りです.

ただまぁ,大学名を合コンの際の武器にしたい人には向いてないかもしれません.

まとめ

もうちょっと都会にあれば完璧だったんですが,総合的に言ってNAISTはよい大学だと思います.私自身も,NAISTに進学して,非常に良かったと思っていますし,自信を持って後輩に薦めることができます.

興味のある方は日本全国で説明会を開催しているようですので,足を運んでみると良いと思います.