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バイオリンと山、自転車をこよなく愛するkurのチラシの裏。たまには技術的なことを書いたりするかも知れません。

世界でもっとも美しい10の科学実験

美しい科学実験って何だろう?

このフレーズが気になるばかりに購入してしまった本.

そもそも私は,科学実験を美しいと思ったことがない.どんな科学実験が美しいかと考えたこともない.この本によると,その原因は社会的,文化的,哲学的に3つあるそうだ.

まずは社会的な理由であるが,科学者は客観的根拠に基づいて事実を述べると考えられているからだそうだ.

私も実験を行って論文を書くことがあるが,基本的には実験のデータを使って,それを出来るだけ客観的に記述する.実験に対して,そして結果に対して「美しい」なんていうのは論外である.

次に,文化的な要因である.これは学校における理科の教え方の問題だそうだ.ふと思い出せば,高専時代に数多くの実験(論理回路を用いたものや,アナログ回路やマイコンを用いたものなど)を行ったが,基本的にこれらは結果が分かっているものであり,授業の内容を深く理解するものである.そのため,学生は実験を「美しい」などとは思わないのだと思う.

最後は哲学的な理由であるが,これは「美は抽象的なものの中にしか存在しない」という偏見によるものらしい.確かに,数式やモデルといった抽象的なものと,機械や装置をいじくりまわす実験は抽象的ではなく,美とは結びつきにくいように思えるのかもしれない.

とはいえ,実験のどこが美しいかを言葉で説明するのは非常に難しい.ただ,ひとつ言えることは,私はこの本で紹介されている科学実験を知ることで,確かに「美しい」と感じた.過去の科学者がどのようにして実験を行い,どのような結果になったのか.結果だけでなく,実験の準備から初めて過程から見てこそ「美しい」と感じたし,過去の偉人に対して尊敬の念を抱かざるを得なかった.